死亡したバグダディはどんな人物だったのか?報復テロの可能性は?

アメリカのトランプ大統領は27日朝に緊急会見を行い、生死が不明だった過激派組織イスラム国(IS)の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が、26日にシリア北西部でアメリカ特殊作戦部隊の急襲を受け、自爆して死亡したと発表した。

トランプ大統領によると、バグダディ容疑者の隠れ家を特定する作戦は2週間前から始まり、当日はアメリカ軍部隊が8機のヘリコプターに乗って急襲現場まで行ったという事だ。

トランプ大統領やペンス副大統領、エスパー国防長官らは、この急襲の模様をホワイトハウスの地下にある戦況分析室で見守っていたという。

バグダディ容疑者の潜伏先は、シリア北西部イドリブ県のバリシャ村だったようで、急襲のアメリカ部隊はデルタフォースが中心だったようだ。

アメリカ軍のヘリが到着した際、地上からイスラム国の銃撃を受けたがアメリカ側に損害はなく、逆にイスラム国の戦闘員を約10人殺害した。

バグダディ容疑者の潜伏先の建物の正面入り口には、爆弾が仕掛けられている可能性があったため、アメリカ部隊は建物の側壁を爆破し、そこから突入した。

バグダディ容疑者はアメリカの軍用犬に追われ、建物から通じるトンネルに逃げ込んだが、トンネルの先は行き止まりになっていた。

追い詰められたバグダディ容疑者は、3人の我が子を道ずれにして、身に付けていた自爆ベストを爆破し、吹っ飛んだようだ。

その後、遺体の一部のDNAを鑑定した結果、バグダディ容疑者であると特定された。

バグダディ容疑者の遺体は、その後海に水葬されたようだ。

トランプ大統領は、バグダディ容疑者が終始泣き叫んでいたとし、「犬のように死んだ。臆病者のように死んだ。」と述べた。

更に、「異常で邪悪なヤツだったが、今や消え去った。米国にとっては素晴らしい日になった」と述べた。

今後、アメリカ軍のシリアからの撤退が加速すると見られている。

 

トランプ大統領の発表に対しロシアは27日、「空爆は記録されていない。確実な情報ではない。」と懐疑的な見方を示していたが、28日には「トランプ大統領は、国際テロと戦うために大きく貢献した。」と述べ、「ロシア軍が現場でアメリカ軍の飛行機を見た」と発表した。

アメリカはバグダディ容疑者の後継者に、「イラク出身のアブドラ・カルダシュ幹部が選ばれたとの情報がある」と報じているが、現時点ではイスラム国側から声明は出されていない。

トランプ大統領は、「バグダディの死亡で世界はより安全になった」と宣言したが、バグダディ容疑者が示した「カリフの府」の過激な思想は、中東からアフリカ・アジアにまで急速に拡散し続けているようだ。

最も懸念されるのが、バグダディ容疑者を失った事に対する報復テロだ。

バグダディ容疑者の死後、首都バグダッド北方にあるアメリカ軍部隊の駐留拠点付近に、早速ミサイルが1発撃ち込まれている。

イラクでは最近、激しい衝突を伴う反政府デモが続いており、イラク政府は28日に首都に夜間外出禁止令を発令している。

イスラム国がこの混乱に乗じて、報復に出るのではないかとの懸念も指摘されているようだ。

そこで、ここではバグダディ容疑者がどのような人物だったのかと、イスラム国による報復テロの可能性を調べてみた。

 


【バグダディ容疑者はどんな人物だったのか?】

 

バグダディ容疑者の写真
出典:文春オンライン

 

 

 

 

 

 

 

・名前:アブー・バクル・アル=バグダーディー(アブバクル・バグダディ)

・生年月日:1971年7月28日(48歳没)

・出生:イラク・サーマッラー、ブーバドリー族の出身

・宗教:イスラム教スンナ派

 

「来歴」

・アブバクル・バグダディ容疑者は、預言者ムハンマド(コーランで神の使徒や警告者と呼ばれている人物で、最後の預言者とされている)の出身部族のクライシュ族の血を引くブーバドリー族の出身で、1971年にイラクのサーマッラーで生まれた。

その後、1994年から2004年までは、バグダード西部のトブチで貧しい生活を送っていた。

2003年のイラク戦争時は、バアス党の党員として活動していたとされているが、モスクで聖職者をしていたとする説もある。

 

・2004年2月、アメリカに対する抵抗組織の設立に関与した容疑で拘束され、キャンプ・ブッカに収容された。

この時、収容中に過激な思想の影響を受け、後のイスラム国の主要メンバーとなる人脈を築いたと言われている。

そして、同年12月に釈放され、キャンプ・ブッカで知り合った仲間と、ビン・ラディンが率いていたアルカイダの有力な組織(国際指名手配を受けていた組織)の活動に加わった。

 

・2006年、ムジャーヒディーン諮問評議会に加わり、イラク・イスラム国ではアブー・ウマル・アル=バグダーディーの下で、ビン・ラディンらアルカイダ幹部との連絡役を務めていた。

 

・2010年、アブー・ウマル・アル=バグダーディーが殺害されると、その後を受けアミール(指導者)に就任すると同時に諮問評議会の幹部になった。

 

・2011年5月、ビン・ラディンが殺害されると報復を宣言する声明を出し、5月5日に2011年ヒッラ爆弾テロ事件を起こし、死者24人、負傷者72人を出した。

更に、8月15日に自爆テロを起こし、70人を殺害した。

その後、バグダディ容疑者はウェブサイト上で「今後100の都市でテロを実行する」と表明した。

 

・2013年4月8日、シリアの過激派組織ヌスラ戦線との合併を宣言し、組織名を「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」に改称した。

アルカイダは5月にISILの解散を命令したが、バグダディ容疑者は命令を無視し、シリアへの介入を進め、シリア各地で残虐行為をしたため、2014年2月にアルカイダが「ISILとは無関係である」と発表し、ISILを絶縁した。

 

・2014年6月29日、バグダディ容疑者はイラク・シリアにまたがるイスラム国家「イスラム国(IS)」の建国と、自身のカリフ即位を一方的に宣言した。

カリフとは、預言者ムハンマド亡き後のイスラーム共同体、イスラーム国家の指導者、最高権威者の称号の事を言う。

同年11月8日、アメリカおよび有志国による空爆で、バグダディ容疑者がイラク北部のモスルで死亡または負傷したと報道されたが、11月13日にバグダディ容疑者本人による音声メッセージが公表され、生存が確認された。

 

・2015年1月20日、シリア人権監視団はイラク国境で実施したアメリカ軍の空爆で、バグダディ容疑者が負傷し、再びシリアに移動したと発表した。

同年4月21日、ガーディアン(イギリスの大手一般新聞)は3月18日に有志連合がイラク・シリア国境付近で実施した空爆で、バグダディ容疑者が重傷を負ったと報道し、その後イスラエルの病院で治療を受け、4月28日に死亡したと報じられたが、5月14日にイスラム国からバグダディ容疑者本人の音声メッセージが公表された。

 

・2017年5月28日、シリアのラッカ近郊でイスラム国幹部の会合が行われるのを狙い、ロシア軍が空爆を行い、同国防省がバグダディ容疑者が死亡した可能性があると発表したが、9月28日にバグダディ容疑者本人の録音メッセージが公表された。

しかし、いつ録音したかについては分かっていない。

 

・2019年4月29日、インターネット上でバグダディ容疑者本人と思われる映像が公開された。

アメリカ・イラク・トルコなどの関係者は、2018年頃から拘束した複数のイスラム国幹部からバグダディ容疑者の居場所に関する有力な情報を聞き出し、把握し始めていた。

 

・2019年10月26日、バグダディ容疑者はアメリカ軍の特殊作戦部隊の急襲を受け、トンネル内に追い詰められ、3人の我が子を道ずれにして、身に付けていた自爆ベストを爆破し、自爆した。

その後、遺体の一部のDNA鑑定により、バグダディ容疑者本人であると確認された。

 


【報復テロの可能性は?】

 

イスラム国は最高指導者を失ったが、かつてのような広大な支配地域はなく、バグダディ容疑者も以前のようなカリスマ性や求心力を失墜させているため、指揮系統も曖昧で、バグダディ容疑者がいなくてもイスラム国の残党が各地で個別に活動を続けていく可能性は高いと言えるだろう。

イスラム国の最大の特徴は、インターネットを利用して世界中の差別・貧困・格差の現状に絶望している若者に過激主義を植え付けていった事だ。

イスラム国の残党や支持者は、アフリカやアジア、アフガニスタン、欧州など、世界中に潜伏していると言われている。

こういう残党や支持者が、報復テロを行う可能性は十分に考えられる。

ビン・ラディンが殺害された際にも、当時指導者だったバグダディ容疑者が報復テロを宣言し、爆弾テロや自爆テロが行われている。

もしかすると、2020年に行われる東京オリンピックも標的にされるかもしれない。

テロを未然に防ぐためには、広い情報収集と的確な分析が不可欠だ。

日本の警察では、外国治安情報機関等と緊密に連携し、テロ関連情報の収集・分析を強化している他、その分析結果を重要施設の警戒警備等の諸対策に活用しているようだ。

今後は警察だけでなく、警察と民間事業者、地域住民などが緊密に連携して行う「官民一体の日本型テロ対策」を全国に推進し、テロの未然防止の強化を図るようだ。

 


【イスラム国の新指導者決定】

 

イスラム国は10月31日、系列のメディアを通じ音声の声明を発表し、バグダディ容疑者が死亡した事を認めた。

また、新指導者には、「アブイブラヒム・ハシミ・クラシ」を選んだとし、「新指導者は米国に苦痛と惨劇をもたらす」と、報復を示唆する声明も発表した。

新指導者の「アブイブラヒム・ハシミ・クラシ」の名前はこれまで知られておらず、素性は分からないが、声明ではイスラム法学者で、米国との戦いを経験してきた重要人物だとしているようだ。

イスラム国はイスラム教徒に対し、新指導者に忠誠を誓うよう求めており、新指導者の下で組織の立て直しを図ると見られている。

 

 

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