2019年12月12日から12月29日までに、中国湖北省武漢市(ちゅうごく こほくしょう ぶかんし)で原因不明の肺炎患者が多数確認され、今年1月11日、初の死亡者が出たと発表され、死亡したのは61歳の男性患者だった。
この死亡した男性は、患者が多く出た海鮮市場の出入り業者だった。
武漢市当局はこれまで、59人の患者を確認したとしており、同年1月10日までにこれらの人たちの検査を終え、41人を新型コロナウイルスによる肺炎と診断している。
また、当局は「1月3日以降、新たな症例は見つかっておらず、ヒトからヒトへの感染も確認されていない。」と説明している。
WHO(世界保健機関)も8日に、中国湖北省武漢市で発症が相次ぐ原因不明の肺炎は、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)を発症させたウイルスの仲間で、新種のウイルスの可能性があると発表した。
しかし、これらの患者全員の原因病原体という確定には至っておらず、病原体の精密な確認にはもっと包括的な情報が必要としているが、中国当局による臨床検査の結果、SARSコロナウイルスやMERSコロナウイルス、インフルエンザ、鳥インフルエンザなどの病原体の可能性は排除されているとしている。
WHOによると、コロナウイルスは周期的に出現し、2002年にSARS、2012年にMERSを引き起こしたようだ。
この原因不明の肺炎の発生を受け、仙台空港でも入国者を対象に警戒を呼び掛けるなどし、検疫を強化しているようだが、どのような症状があれば今回の原因不明の肺炎の疑いがあるのだろうか。
また、感染対策など、どのような備えをすればいいのだろうか。
目次
【武漢市での原因不明の肺炎の疑い例の定義と感染対策】
「原因不明の肺炎の疑い例の定義」
武漢市での原因不明の肺炎の疑い例の定義は、次の1、2の全てを満たす場合を疑い例としている。
1.発熱(37.5℃以上)かつ呼吸器症状がある。
2.以下の(ア)、(イ)の曝露歴(ばくろれき)のいずれかを満たす。
発症から2週間以内に
(ア)武漢市を訪れた。
(イ)武漢市の原因不明の肺炎患者、又はその疑いがある患者と2m以内での接触歴がある。
「武漢市での感染対策」
急性呼吸器感染症患者の診察時には標準予防策として、呼吸器症状を呈する患者本人には必ずサージカルマスクを着用させ、医療従事者は診察する際に、サージカルマスクを含めた標準予防策を実施している事を前提とし、上記(ア)、(イ)のいずれかの曝露歴のある患者を診察する場合は、次のような対策をする。
・診察室および入院病床は個室にするのが望ましい。
・患者の気道吸引、気管内挿管の処置など、エアロゾル発生手技を行う場合には空気感染の可能性を考慮し、N95マスクを装着する。
・患者の移動は医学的に必要な目的のみに限定し、移動させる場合には患者にサージカルマスクを装着させる。
【検査や対応方法は?】
先ずはインフルエンザ等の一般的な呼吸器感染症を考慮し、これらについて微生物学的な検査を行い、検査の結果、原因微生物が特定された場合には、検出された微生物に必要な感染防止対策を行う。
上述の疑い例の定義に該当し、これらの検索で病原体が陰性の場合、軽症の場合には咳エチケット・手指衛生の指導をした上で経過観察とする。
重症で疑似症サーベイランスの対象の定義を満たした場合には、当該医療機関を所管する保健所に報告する。
報告後は、「疑似症サーベイランスの運用ガイダンス(第三版)」に基づき、評価や検体採取、検査などが行われる。
【原因不明の肺炎に対する備えは?】
今後の情報を注視する必要はあるが、日本国内では、これまでに原因不明の肺炎と関連する患者の発生報告はなく、ヒトからヒトへの感染も報告されていない。
しかし、国内の医療機関は中国(特に武漢市)からの観光客には注意しなければならない。
また、武漢市に渡航した人、渡航を予定している人は次の点に注意する必要がある。
「渡航した人」
・潜伏期間があるかもしれないため、帰国後は数週間、健康状態を注意深く観察し、体調不良を起こした場合は速やかに病院を受診しよう。
また、その時、渡航歴を必ず医師に伝えるようにしよう。
・咳や喉の痛み、鼻水などの症状がある場合は、マスクを着用するようにしよう。
マスクがない場合は咳エチケットを徹底するようにしよう。
「渡航を予定している人」
・家禽(かきん)や野生動物との接触、人込みなどは避け、生肉や調理が不十分な肉の摂取は控えるようにしよう。
・現地の体調が悪い人や病人との接触は避けるようにしよう。
・食事やトイレの後などは、こまめに手洗いをするようにしよう。