撃墜認めたイラン国内で抗議デモ!イランはどう責任を取るのか?

ウクライナ旅客機の撃墜を認めたイラン指導部に対して、国内外で批判が高まっている。

イラン国内では、首都テヘランやシラーズ、イスファハーン、ハマダーン、オルーミーイェなどの複数の都市で指導部への抗議デモが発生し、英国大使がデモをあおったとして、当局に数時間拘束される事態となった。

英国のラーブ外相は、「根拠や説明なく我が国の大使を逮捕したのは、言語道断の国際法違反だ。」という声明を発表し、「政治的、経済的に国際社会から孤立する道を歩み続けるのか、緊張緩和に動いて外交的な道を歩むのか、イランは岐路に立っている。」と主張した。

 

米国のトランプ大統領は、ツイッターに「抗議活動を注意深く見ている。あなた方の勇気に触発されている。」と投稿し、デモ参加者を支持する考えを示した。

更に、トランプ大統領は「イラン政府は、人権団体が抗議活動の現場で起きている事実を報告することを許可すべきだ。平和的な抗議活動を再び虐殺してはならないし、インターネットを閉鎖してはならない。世界が見ている。」とも投稿した。

一方、旅客機に57人の国民が搭乗していたカナダや英国、ウクライナは誤射を認めた事は重要な一歩だとし、カナダのトルドー首相は記者会見で「イランが認めたことは非常に深刻だ。民間機を撃ち落としたのは恐ろしい事態だ。イランは全面的に責任を負わなければならない。」と述べた。

 

イランのファルス通信はデモ参加者数を千人と伝え、デモ参加者たちはウクライナ旅客機の犠牲者を悼むため、テヘランの大学の近くに集まったが、道路をふさいだため、警察に解散させられる事態となった。

その際、催涙ガスが使われたという情報もあるようだ。

デモ参加者たちは、米軍に殺害された革命防衛隊ソレイマニ司令官の写真を破り、「嘘つきには死を」などと叫び、最高指導者であるハメネイ師の退陣を求める声も上がった。

また、米国との緊張が高まっている時に、当局がウクライナ旅客機の離陸を許可した事を疑問視する声も上がっている。

 

ウクライナ大統領府は、イランのロウハニ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に対し、「ウクライナ機撃墜の関係者らを処罰する。」と伝えた事を明らかにした。

ウクライナ大統領府によると、ロウハニ大統領はゼレンスキー大統領に「この空の惨事に関わった者全員を裁きにかける。」と伝え、「我が国の兵士の過ちが招いたこの悲劇を十分に認識している。」と謝罪したという。

ゼレンスキー大統領は、旅客機撃墜で死亡したウクライナ人11人の遺体送還を、1月19日までに実現できるようイラン政府に求め、ウクライナ外交官らが「補償問題の解決」に向け、工程表を作成している事を報告した。

イラン側はこの問題について、ウクライナ側に合意しているという事だ。

 

ロウハニ大統領は、「この空の惨事に関わった者全員を裁きにかける。」と言っているが、誤射に関わった関係者の処罰だけで済むのだろうか。

革命防衛隊を指揮する最高指導者のハメネイ師が、責任を取るべき問題ではないだろうか。

是非とも、被害者遺族や国際社会が納得できる厳重な処罰をお願いしたい。

 

イラン撃墜認めた!ウクライナ、イランに公式謝罪と賠償求める

イランの統合参謀本部などは11日早朝に、イランメディアを通じ、ウクライナ旅客機の墜落は人的ミスによる撃墜だった事を認めた。

これを受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は同日、「朝、真実がもたらされた。」とイランが罪を認めた事を歓迎した上で、「完全に罪を認めるよう求める。イランが加害者の責任を問い、被害者の遺体を返還し、補償金を支払い、公式に謝罪すると期待する。」と自身のフェイスブック上に掲載した。

更に、ゼレンスキー大統領は「今後の調査が人為的に遅延されないことを望む。」とも述べた。

 

イラン側はこれまで、技術的な不具合による事故だったとし、ミサイルによる撃墜の可能性を強く否定してきたが、ミサイルによる撃墜映像などが公開された事などで、短期間での撤回を余儀なくされる形となった。

イラン軍は声明で、撃墜当時は米国の脅威に対し、防空システムの警戒レベルが最大限に強化されていたと説明した上で、旅客機が引き返し、革命防衛隊の基地に近づいたため、敵国の軍用機と見間違えて撃墜したと主張した。

また、イランのザリフ外相は、「軍による内部調査の初期段階の結論として、撃墜は人為的なミスが原因」だと指摘した上で、「米国の冒険主義によって生じた危機の中での過ちである。」と主張し、「自国の国民、全ての犠牲者の遺族や影響を受けた他国へ深い遺憾の意を示す。」と述べた。

 

ウクライナのゼレンスキー大統領はこれまで、「原因はまだ明らかではない。」とし、国際社会に慎重な姿勢を呼び掛ける一方で、イランには透明で包括的な調査を行うよう強く求めていた。

一方、ロシア上院のコサチョフ国際問題委員長は同日、「米国による反撃の脅威があった状況下で起きた事件だが、それはイランのミスを正当化できるものではない。」とイランを批判し、更に、欧米メディアなどが「旅客機の撃墜にはロシア製のミサイルが使用された。」などと報道している事について、コサチョフ国際問題委員長は「悲劇を反露キャンペーンに利用しようとする行為だ。完全に非道徳的だ。」と述べた。

 

イラン側の人為的ミスによる撃墜なのに、米国を非難するのはおかしいし、フライト記録を確認できるサイトには旅客機が引き返した軌跡もないハズなのに、「旅客機が引き返し、革命防衛隊の基地に近づいたため、敵国の軍用機と見間違えて撃墜した。」と言っているところが、往生際が悪いように思えてならない。

機体の破片を撤去し、証拠隠滅を図ろうとしていた事も、現地を取材した米メディアに指摘されていたし、旅客機のフライトデータも渡さなかった。

バレなければこのまま事故で押し通すつもりだったのだろう。

176人もの人が亡くなっているのだから、イランには最初から素直に認めてほしかったと思う。

今後の真摯な対応に期待したい。

 

 

【ウクライナ旅客機墜落】米政府はイランが撃墜したと判断か

今月8日にイランの首都テヘランの空港付近でウクライナ旅客機が墜落した事件で、米ニューヨーク・タイムズなどの米メディアは9日、米政府が「イランにより誤って撃墜された可能性が高いと判断している。」と報じた。

墜落した同旅客機は、ウクライナ国際航空のボーイング737-800型機で、イラン人やカナダ人、ウクライナ人、スウェーデン人、アフガニスタン人、ドイツ人、イギリス人などの多数の外国人が搭乗しており、乗客・乗員を合わせた176人全員が死亡した。

イランの国営メディアは、同旅客機がテヘラン空港からウクライナの首都キエフへ向かって飛び立ったが、離陸直後に機体の不具合が発生し、空港へ引き返そうとしていたが、高度8,000フィート(2,440m)付近でレーダーから消えたなどと報じていた。

しかし、墜落前に機体が炎上していたとの情報もあるようだ。

同旅客機が墜落したのは8日午前6時過ぎで、同日午前1時半頃にはイランが米軍駐留基地にミサイル攻撃を行っていた事から、何らかの軍事行動に巻き込まれたのではないかという憶測も上がっていたが、イラン軍の広報官は「バカげたプロパガンダだ。」などと強く否定していた。

米CBSテレビは、米情報機関が墜落直前に地対空ミサイル2発の発射を探知し、ミサイルの破片と見られる物が墜落現場付近で見つかったと報じている。

トランプ大統領は9日にホワイトハウスで、イランによる撃墜の可能性について記者団に「私なりの疑いを持っている。旅客機は物騒な地域を飛んでいた。」などと述べたが、イランによる撃墜の断定は避けた。

また、カナダのトルドー首相も「イラン側が誤って地対空ミサイルで撃ち落とした可能性がある。」と述べている。

 

下の写真は、ウクライナ旅客機が墜落した現場の写真。

ウクライナ旅客機の墜落現場の写真
引用:ロイター

 

下の写真は、フライトの記録を見る事ができるサイトにある、今回墜落したウクライナ旅客機のフライトデータだが、これを見る限り、引き返した様子は見られない。

墜落したウクライナ旅客機の飛行軌跡
引用:とくダネ

イランの国営メディアが報じた「離陸直後に機体に不具合が発生し、空港へ引き返そうとしていた。」という内容とは異なっており、イランは墜落した旅客機のフライトデータも渡さないと言っている。

やはり、誤って撃墜してしまったのだろうか。

 

墜落当日は、イランの複数の弾道ミサイルがイラクの米軍駐留基地に撃ち込まれた日で、軍事的な緊張が高まっていた。

イランメディアは、旅客機の墜落に関してイラン当局の責任者が「この空域は国際便や国内便が行き交っており、そうした場所でミサイルを発射するなど有り得ない事だ。筋の通らない噂に過ぎない。」と述べ、関与を強く否定していると伝えている。

 

イラン当局の責任者は、墜落した旅客機の操縦席の会話などが録音されているブラックボックスを、航空機メーカーのボーイング社や米国側に提供する事に否定的のようだ。

しかし、犠牲者が出たウクライナやカナダなどの関係国には、原因調査に参加する事に前向きな姿勢を示している。

イラン大統領府によると、ロウハニ大統領は9日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、犠牲者への哀悼の意を示した上で原因の究明に向け、両国が全面的に協力していく事を確認したようだ。

だが、ウクライナ当局はミサイル被弾やテロの可能性を排除しておらず、ミサイルや爆弾によって撃墜された可能性についても調査している。

ブラックボックスは破損しているようだが、コアメモリーへのアクセスは可能なようだ。

 

今回墜落したボーイング737-800型機は、世界中で何千機も運用されており、既に数千万回航行している。

航空安全の専門家トッド・カーティス氏によると、今回の墜落を含め、これまで10件の事故が起きているという。

だが、あらゆる状況から見て、同旅客機は正しく整備され、欧米の航空当局からも特段の問題はないとされていたため、現時点では特定の原因を示すものは何もないようだ。

誤った撃墜でない事を祈りたい。

 

 

イランの報復攻撃でなぜ米軍に犠牲者が出なかったのか?

イランは、革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官が米軍に殺害された事に対する報復として、8日未明、イラクにある駐留米軍基地2ヶ所を射程約500kmの国産短距離弾道ミサイル「ファテフ313」などで攻撃した。

これに対し、トランプ大統領は、米東部時間8日午前(日本時間9日未明)に声明を発表し、イランの攻撃で米軍将兵に死者はいなかったと説明した。

米メディアは、イランから米国側に事前に警告があったと伝えており、CNNテレビによると、イランはミサイル攻撃を事前にイラク政府に伝えていたようだ。

また、トランプ大統領は、イランの核保有を許さないとの立場を改めて示し、イラン指導部に対し、「強力な制裁を科し、イランが態度を改めるまで続ける。」と述べたが、一方でイランに対し軍事力を用いたくはないとも表明した。

更に、米国防総省は、反撃方法を精査すると共に、域内の米国人や同盟・友好国を守るために、あらゆる必要な措置を取ると発表した。

イラン側もイラクにある駐留米軍基地2ヶ所を攻撃後、戦争は望んでいないとの姿勢を強調しており、ザリフ外相はツイッターで、「均衡のとれた自衛措置を実行し、終了した。」と述べている。

しかし、イランの革命防衛隊幹部は今回の攻撃を「第1段階」だとしており、第2段階、第3段階の挑発や攻撃が行われる可能性はある。

ロウハニ大統領の顧問はツイッターで、「米国が更にイラン側を攻撃すれば、地域で全面戦争が起きるだろう。」と述べ、米国を牽制している。

 

イランの報復攻撃による米軍駐留基地の被害状況が、人工衛星の画像により明らかになった。

下の画像は、その被害状況が分かる画像で、左半分が被害前の画像、右半分が被害後の画像となっており、赤丸の部分が被害を受けた場所だと思われる。

イランの報復攻撃による米軍駐留基地の被害前と被害後の画像
引用:CNN.co.jp

 

トランプ政権は、2018年5月にイラン核合意からの離脱を一方的に宣言し、イランに対する経済制裁を復活させ、ミサイル開発や武装勢力支援の停止を含む新合意を結ぶようイランへの圧力を強めてきたため、イランは核合意の履行義務を段階的に停止し、緊張が高まっていた。

 

イランによるミサイル攻撃は、ソレイマニ司令官の葬儀が終了した直後とされ、イラク時間の8日午前1時半頃に始まったが、イラン領内からのミサイル攻撃は異例の事だ。

イランの最高指導者ハメネイ師は8日、「米国に平手打ちを食らわせた。米国は中東から去るべきだ。」と強調している。

イランの革命防衛隊は、米国に出撃拠点を提供している国にも報復すると警告し、米国の後ろ盾を受けているイスラエルを攻撃対象とする可能性も示唆している。

一方、トランプ大統領は7日、「ソレイマニ司令官は米権益などへの大規模な攻撃を計画していた。」とし、今回の殺害は正当だと主張している。

 

イラン側は今回のミサイル攻撃で、米兵ら80人を殺害したと主張しているが、その根拠は明らかにしていない。

一方、米国側は米軍将兵に死者はいなかったと説明しており、双方の説明に食い違いがある。

どちらが本当なのかは定かではないが、イランが事前にミサイル攻撃を伝えていたのであれば、米国は事前に米兵を非難させていたと考えられるので、死者は本当にいなかったのかもしれない。

イランのメディアは、今回のミサイル攻撃で「米部隊側の80人が死亡、200人が負傷した。」と伝えているが、これはイラン国内向けの政治的な宣伝だと見られている。

イランは国民の手前、報復しない訳にはいかなかったため、米国に事前に伝え、双方合意の上での攻撃だったのかもしれない。

つまり、今回の「殉教者ソレイマニ作戦」という報復攻撃は、出来レースだったという事なのだろうか。

とりあえず全面戦争は回避となったが、米国の追加制裁の内容によってはイランの更なる報復も考えられる。

しかし、戦争は始めるより終わらせる方が遥かに難しい事を、お互い十分に理解しているだろうから、そう簡単には全面戦争にはならないだろう。

だが、本当に全面戦争となれば日本にとっても対岸の火事ではないので、今後の動向に注目したい。

 

 

死亡したバグダディはどんな人物だったのか?報復テロの可能性は?

アメリカのトランプ大統領は27日朝に緊急会見を行い、生死が不明だった過激派組織イスラム国(IS)の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者が、26日にシリア北西部でアメリカ特殊作戦部隊の急襲を受け、自爆して死亡したと発表した。

トランプ大統領によると、バグダディ容疑者の隠れ家を特定する作戦は2週間前から始まり、当日はアメリカ軍部隊が8機のヘリコプターに乗って急襲現場まで行ったという事だ。

トランプ大統領やペンス副大統領、エスパー国防長官らは、この急襲の模様をホワイトハウスの地下にある戦況分析室で見守っていたという。

バグダディ容疑者の潜伏先は、シリア北西部イドリブ県のバリシャ村だったようで、急襲のアメリカ部隊はデルタフォースが中心だったようだ。

アメリカ軍のヘリが到着した際、地上からイスラム国の銃撃を受けたがアメリカ側に損害はなく、逆にイスラム国の戦闘員を約10人殺害した。

バグダディ容疑者の潜伏先の建物の正面入り口には、爆弾が仕掛けられている可能性があったため、アメリカ部隊は建物の側壁を爆破し、そこから突入した。

バグダディ容疑者はアメリカの軍用犬に追われ、建物から通じるトンネルに逃げ込んだが、トンネルの先は行き止まりになっていた。

追い詰められたバグダディ容疑者は、3人の我が子を道ずれにして、身に付けていた自爆ベストを爆破し、吹っ飛んだようだ。

その後、遺体の一部のDNAを鑑定した結果、バグダディ容疑者であると特定された。

バグダディ容疑者の遺体は、その後海に水葬されたようだ。

トランプ大統領は、バグダディ容疑者が終始泣き叫んでいたとし、「犬のように死んだ。臆病者のように死んだ。」と述べた。

更に、「異常で邪悪なヤツだったが、今や消え去った。米国にとっては素晴らしい日になった」と述べた。

今後、アメリカ軍のシリアからの撤退が加速すると見られている。

 

トランプ大統領の発表に対しロシアは27日、「空爆は記録されていない。確実な情報ではない。」と懐疑的な見方を示していたが、28日には「トランプ大統領は、国際テロと戦うために大きく貢献した。」と述べ、「ロシア軍が現場でアメリカ軍の飛行機を見た」と発表した。

アメリカはバグダディ容疑者の後継者に、「イラク出身のアブドラ・カルダシュ幹部が選ばれたとの情報がある」と報じているが、現時点ではイスラム国側から声明は出されていない。

トランプ大統領は、「バグダディの死亡で世界はより安全になった」と宣言したが、バグダディ容疑者が示した「カリフの府」の過激な思想は、中東からアフリカ・アジアにまで急速に拡散し続けているようだ。

最も懸念されるのが、バグダディ容疑者を失った事に対する報復テロだ。

バグダディ容疑者の死後、首都バグダッド北方にあるアメリカ軍部隊の駐留拠点付近に、早速ミサイルが1発撃ち込まれている。

イラクでは最近、激しい衝突を伴う反政府デモが続いており、イラク政府は28日に首都に夜間外出禁止令を発令している。

イスラム国がこの混乱に乗じて、報復に出るのではないかとの懸念も指摘されているようだ。

そこで、ここではバグダディ容疑者がどのような人物だったのかと、イスラム国による報復テロの可能性を調べてみた。

 


【バグダディ容疑者はどんな人物だったのか?】

 

バグダディ容疑者の写真
出典:文春オンライン

 

 

 

 

 

 

 

・名前:アブー・バクル・アル=バグダーディー(アブバクル・バグダディ)

・生年月日:1971年7月28日(48歳没)

・出生:イラク・サーマッラー、ブーバドリー族の出身

・宗教:イスラム教スンナ派

 

「来歴」

・アブバクル・バグダディ容疑者は、預言者ムハンマド(コーランで神の使徒や警告者と呼ばれている人物で、最後の預言者とされている)の出身部族のクライシュ族の血を引くブーバドリー族の出身で、1971年にイラクのサーマッラーで生まれた。

その後、1994年から2004年までは、バグダード西部のトブチで貧しい生活を送っていた。

2003年のイラク戦争時は、バアス党の党員として活動していたとされているが、モスクで聖職者をしていたとする説もある。

 

・2004年2月、アメリカに対する抵抗組織の設立に関与した容疑で拘束され、キャンプ・ブッカに収容された。

この時、収容中に過激な思想の影響を受け、後のイスラム国の主要メンバーとなる人脈を築いたと言われている。

そして、同年12月に釈放され、キャンプ・ブッカで知り合った仲間と、ビン・ラディンが率いていたアルカイダの有力な組織(国際指名手配を受けていた組織)の活動に加わった。

 

・2006年、ムジャーヒディーン諮問評議会に加わり、イラク・イスラム国ではアブー・ウマル・アル=バグダーディーの下で、ビン・ラディンらアルカイダ幹部との連絡役を務めていた。

 

・2010年、アブー・ウマル・アル=バグダーディーが殺害されると、その後を受けアミール(指導者)に就任すると同時に諮問評議会の幹部になった。

 

・2011年5月、ビン・ラディンが殺害されると報復を宣言する声明を出し、5月5日に2011年ヒッラ爆弾テロ事件を起こし、死者24人、負傷者72人を出した。

更に、8月15日に自爆テロを起こし、70人を殺害した。

その後、バグダディ容疑者はウェブサイト上で「今後100の都市でテロを実行する」と表明した。

 

・2013年4月8日、シリアの過激派組織ヌスラ戦線との合併を宣言し、組織名を「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」に改称した。

アルカイダは5月にISILの解散を命令したが、バグダディ容疑者は命令を無視し、シリアへの介入を進め、シリア各地で残虐行為をしたため、2014年2月にアルカイダが「ISILとは無関係である」と発表し、ISILを絶縁した。

 

・2014年6月29日、バグダディ容疑者はイラク・シリアにまたがるイスラム国家「イスラム国(IS)」の建国と、自身のカリフ即位を一方的に宣言した。

カリフとは、預言者ムハンマド亡き後のイスラーム共同体、イスラーム国家の指導者、最高権威者の称号の事を言う。

同年11月8日、アメリカおよび有志国による空爆で、バグダディ容疑者がイラク北部のモスルで死亡または負傷したと報道されたが、11月13日にバグダディ容疑者本人による音声メッセージが公表され、生存が確認された。

 

・2015年1月20日、シリア人権監視団はイラク国境で実施したアメリカ軍の空爆で、バグダディ容疑者が負傷し、再びシリアに移動したと発表した。

同年4月21日、ガーディアン(イギリスの大手一般新聞)は3月18日に有志連合がイラク・シリア国境付近で実施した空爆で、バグダディ容疑者が重傷を負ったと報道し、その後イスラエルの病院で治療を受け、4月28日に死亡したと報じられたが、5月14日にイスラム国からバグダディ容疑者本人の音声メッセージが公表された。

 

・2017年5月28日、シリアのラッカ近郊でイスラム国幹部の会合が行われるのを狙い、ロシア軍が空爆を行い、同国防省がバグダディ容疑者が死亡した可能性があると発表したが、9月28日にバグダディ容疑者本人の録音メッセージが公表された。

しかし、いつ録音したかについては分かっていない。

 

・2019年4月29日、インターネット上でバグダディ容疑者本人と思われる映像が公開された。

アメリカ・イラク・トルコなどの関係者は、2018年頃から拘束した複数のイスラム国幹部からバグダディ容疑者の居場所に関する有力な情報を聞き出し、把握し始めていた。

 

・2019年10月26日、バグダディ容疑者はアメリカ軍の特殊作戦部隊の急襲を受け、トンネル内に追い詰められ、3人の我が子を道ずれにして、身に付けていた自爆ベストを爆破し、自爆した。

その後、遺体の一部のDNA鑑定により、バグダディ容疑者本人であると確認された。

 


【報復テロの可能性は?】

 

イスラム国は最高指導者を失ったが、かつてのような広大な支配地域はなく、バグダディ容疑者も以前のようなカリスマ性や求心力を失墜させているため、指揮系統も曖昧で、バグダディ容疑者がいなくてもイスラム国の残党が各地で個別に活動を続けていく可能性は高いと言えるだろう。

イスラム国の最大の特徴は、インターネットを利用して世界中の差別・貧困・格差の現状に絶望している若者に過激主義を植え付けていった事だ。

イスラム国の残党や支持者は、アフリカやアジア、アフガニスタン、欧州など、世界中に潜伏していると言われている。

こういう残党や支持者が、報復テロを行う可能性は十分に考えられる。

ビン・ラディンが殺害された際にも、当時指導者だったバグダディ容疑者が報復テロを宣言し、爆弾テロや自爆テロが行われている。

もしかすると、2020年に行われる東京オリンピックも標的にされるかもしれない。

テロを未然に防ぐためには、広い情報収集と的確な分析が不可欠だ。

日本の警察では、外国治安情報機関等と緊密に連携し、テロ関連情報の収集・分析を強化している他、その分析結果を重要施設の警戒警備等の諸対策に活用しているようだ。

今後は警察だけでなく、警察と民間事業者、地域住民などが緊密に連携して行う「官民一体の日本型テロ対策」を全国に推進し、テロの未然防止の強化を図るようだ。

 


【イスラム国の新指導者決定】

 

イスラム国は10月31日、系列のメディアを通じ音声の声明を発表し、バグダディ容疑者が死亡した事を認めた。

また、新指導者には、「アブイブラヒム・ハシミ・クラシ」を選んだとし、「新指導者は米国に苦痛と惨劇をもたらす」と、報復を示唆する声明も発表した。

新指導者の「アブイブラヒム・ハシミ・クラシ」の名前はこれまで知られておらず、素性は分からないが、声明ではイスラム法学者で、米国との戦いを経験してきた重要人物だとしているようだ。

イスラム国はイスラム教徒に対し、新指導者に忠誠を誓うよう求めており、新指導者の下で組織の立て直しを図ると見られている。