死亡率30%のインフルエンザ脳症!小児に使用できない解熱剤は?

12月15日、長野県内の小学校に通っていた小学6年の女児が、インフルエンザ脳症が原因で死亡した。

死亡した女児は、13日に登校した際には体調に問題はなかったが、14日に高熱を発症し、医療機関でインフルエンザと診断され、15日にインフルエンザ脳症で亡くなった。

インフルエンザは重い合併症を引き起こす事で知られている。

高齢者や基礎疾患を持つ免疫不全患者の場合、細菌性の二次性肺炎を引き起こすと重症化する事が報告されている。

更に、インフルエンザは、インフルエンザ関連脳症と呼ばれる重度の中枢神経症状を呈する急性脳症を発症する事でも知られている。

インフルエンザ脳症は日本での報告が多く、小児が報告の中心となっているようだ。

インフルエンザ脳症にはどのような特徴があるのだろうか。

そして、治療法や予防法、小児に使用してはならない薬などはあるのだろうか。

 


【インフルエンザ脳症の特徴】

 

インフルエンザ脳症は、急性壊死性脳症と呼ばれる事もあり、急速に神経障害・意識障害を伴う症候が見られる。

5歳以下、特に1~3歳に好発し、A型インフルエンザ(A香港型)が原因の場合が多い。

死亡率は約30%もあり、後遺症も約25%の子供に見られる重篤な疾患となっている。

発熱してから平均で1.4日後に発症し、嘔吐・下痢・腎機能障害と共に意識障害も現れ、血小板が減少し、DIC(播種性血管内凝固症候群)になる事もある。

詳しい原因は不明だが、40℃以上の発熱が数時間継続する事と、解熱剤の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服など、何らかの原因で脳の血管内皮細胞が障害されて起こるという事が分かっている。

また、インフルエンザに感染するとサイトカインの産生が高まり、ミトコンドリアのエネルギー代謝が低下し、脂肪代謝系のCPT-Ⅱ酵素への依存度が高まるが、発熱が継続する事でCPT-Ⅱの酵素活性が落ち、CPT-Ⅱ遺伝子多型患者の場合はミトコンドリアが更にエネルギー不足に陥るため、インフルエンザ脳症を起こしやすい事が分かっている。

 


【インフルエンザ脳症の症状】

 

下の表1は、届出のあった主な症状を0~4歳、5~19歳、20~59歳、60歳以上の4つの年齢群に分け、それぞれの報告数と割合を示したもの。

 

届出のあった主な症状を0~4歳、5~19歳、20~59歳、60歳以上の4つの年齢群に分け、それぞれの報告数と割合を示した表
出典:国立感染症研究所

 

20歳以上の成人に比べ、0~19歳までの報告数が多く、発熱に関してはどの年齢群も90%前後と非常に高くなっている。

けいれんは、熱性けいれんを起こしやすい0~4歳の割合が高く、頭痛や嘔吐が比較的多いのは5~19歳、20~59歳となっている。

また、20~59歳、60歳以上は項部硬直・髄液細胞数の増加が見られる割合が多く、届出時に死亡と報告された割合は0~4歳が6.9%、5~19歳が4.9%、20~59歳が9.7%、60歳以上が15.2%となっている。

成人の報告数は小児よりも少ないが、重症度は軽視できないと考えられる。

 


【インフルエンザ脳症の報告数】

2009/2010~2014/2015年の6シーズンのインフルエンザ脳症の報告数は、合計748例となっており、下の図1は各シーズンのインフルエンザ脳症の報告数と、その年齢分布を示したもの。

6シーズンのインフルエンザ脳症の報告数とその年齢分布を示した図
出典:国立感染症研究所

 

2009/2010年シーズンは、新型インフルエンザA(H1N1)pdm09の流行の影響もあり、インフルエンザ脳症の報告数が319件と多くなっており、特に多い年齢層は5~9歳となっている。

インフルエンザ脳症は小児の報告数が多くなっているが、20歳以上の成人も10~35%の報告数があるため、注意が必要となる。

 

下の図2は、各シーズンのインフルエンザ脳症の報告数とインフルエンザ定点当たり報告数を比較したもの。

6シーズンのインフルエンザ脳症の報告数とインフルエンザ定点当たり報告数を比較した図
出典:国立感染症研究所

 

図2を見ると、インフルエンザ定点当たり報告数のピークの時期とインフルエンザ脳症の報告数のピークの時期がよく一致している事が分かる。

つまり、インフルエンザの流行に伴い、インフルエンザ脳症も増加するという事になる。

 


【インフルエンザ脳症の治療と予防】

 

発熱によるCPT-Ⅱ酵素失活により、長鎖脂肪酸の利用が阻害されている事から、70%高炭水化物食と中鎖脂肪酸の摂取が推奨されている。

また、食事回数を増やしたり、解熱も薦められている。

更に、ベザフィブラートにはCPT-Ⅱ転写活性作用があるため、インフルエンザ脳症への効果が期待されている。

 

インフルエンザ脳症を予防するには、ワクチン接種が有効とされている。

ワクチンの最も大きな効果は、重症化を予防する事にあり、ワクチン接種により、インフルエンザの重篤な合併症や死亡を予防する事に期待できる。

国内の研究によると、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については約34~55%の発病を阻止し、約82%の死亡を阻止する効果があったとされている。

また、6歳未満の小児を対象とした2015/2016年シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は約60%と報告されている。

 

「小児に解熱剤を使用する場合は要注意」

小児がインフルエンザになった場合、使用できる解熱剤と使用してはいけない解熱剤があるので注意が必要となる。

・小児に使用できる解熱剤

小児がインフルエンザになった時に使用できる解熱剤は「アセトアミノフェン」という薬剤のみになる。

「アセトアミノフェン」には、熱を下げる効果や全身の痛みを和らげる効果がある。

ただし、効果はそれほど強くない。

 

・小児に使用してはいけない解熱剤

小児がインフルエンザになった時、基本的に使用してはいけない解熱剤は「アスピリン」、「メフェナム酸」、「ジクロフェナクナトリウム」の3種類。

インフルエンザにかかっている小児に「アスピリン」を使用すると、急性脳症の一つであるライ症候群を引き起こす危険性があるため、使用してはならない。

「メフェナム酸」、「ジクロフェナクナトリウム」は、インフルエンザ脳症を引き起こす訳ではないが、小児がインフルエンザ脳症になっている場合、インフルエンザ脳症を悪化させる危険性があるため、基本的に小児のインフルエンザ時の解熱剤として使用してはならない。

 

 

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