【認知症の基礎知識】治るタイプの認知症も存在する?

厚生労働省によると、2025年には認知症の患者数が700万人を超え、65歳以上の実に5人に1人が認知症になると推計されている。

認知症は、年齢を重ねるほど発症する可能性が高くなる。

MCI(正常と認知症の中間とも言える状態)の人も加えると、その人数は更に増加する。

MCIの人の全てが認知症になる訳ではないが、MCIの人のうち年間で10~15%が認知症に移行すると言われている。

認知症は、症状が軽い段階で適切な治療が受けられれば、薬で認知症の進行を遅らせたり、場合によっては症状を改善したりする事もできる。

早期診断と早期治療によって、高い治療効果が期待できるため、いかに早く認知症に気付く事ができるかが重要となる。

では、認知症にはどのような症状が見られるのだろうか。

また、予防方法はあるのだろうか。

 


【認知症とは?】

 

人は誰でも年齢と共に物覚えが悪くなったり、人の名前などを思い出せなくなったりする。

このような物忘れは、脳の老化によるものだが、認知症は脳の老化による物忘れとは違い、何かの病気によって「脳の神経細胞が壊れる」ために起こる症状や状態を言う。

下の表は、「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違いを示したもの。

加齢による物忘れと認知症による物忘れの違いを示した表
引用:政府広報オンライン

 

認知症が進行すると、だんだん理解力や判断力が低下し、社会生活や日常生活に支障をきたすようになる。

認知症には、三大認知症と呼ばれる「アルツハイマー型認知症」と「レビー小体型認知症」、「血管性認知症」の3つの認知症がある。

「アルツハイマー型認知症」は認知症全体の約半数を占め、続いて多いのが「レビー小体型認知症」、「血管性認知症」となっている。

この3つの認知症は、認知症全体の85%を占めており、残りの15%は治るタイプの認知症となっている。

認知症の症状があっても、もととなっている病気を治療すれば治る事もあるため、こうした病気を早期に発見し、早く治療を開始するためにも「認知症かな?」と思ったら、早めに専門医を受診する事が大切となる。

 


【認知症の症状】

 

認知症の症状には「中核症状」と「行動・心理症状」の2つがある。

「中核症状」は、脳の神経細胞が死んでいく事により直接発生する症状で、周囲で起こっている現実を正しく認識できなくなる。

「行動・心理症状」は、本人が元々持っている性格や環境、人間関係などの様々な要因がからみ合って起こる、うつ状態や妄想といった心理面・行動面の症状の事を言う。

 

「中核症状」

・記憶障害

新しい事を記憶できなくなり、ついさっき聞いた事も思い出せなくなる。

病気が進行すれば、以前覚えていたはずの記憶も失われていくようになる。

 

・見当識障害(けんとうしきしょうがい)

見当識とは、現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなどの基本的な状況を把握する能力の事を言い、見当識障害になると、時間や季節感の感覚が薄れ、その後に迷子になったり、遠くに歩いて行こうとしたりするようになる。

病気が進行すると、自分の年齢や家族などの生死に関する記憶がなくなる。

 

・理解力・判断力障害

思考スピードが低下し、2つ以上の事が重なると、話している相手が誰か分からなくなるなど、考え分ける事ができなくなる他、些細な変化やいつもと違う出来事で混乱を来すなどの症状が起こりやすくなる。

 

・実行機能障害

同じ物を買ってしまったり、料理を並行して進められないなど、自分で計画を立てられなくなったり、予想外の変化にも柔軟に対応できないなど、物事をスムーズに進められなくなる。

 

・感情表現の変化

その場の状況がうまく認識できなくなるため、周りの人が予測できないような思いがけない感情の反応を示すようになる。

 

「行動・心理症状」

・能力の低下を自覚する事で、元気がなくなり引っ込み思案になる。

・今まで出来ていた事が出来なくなる事で自信を失い、すべてが面倒になる。

・自分が物をしまった事を忘れ、誰かに物を盗られた妄想を起こす。

・オーバーな訴えをしたり、行動がちぐはぐになって徘徊したりするようになる。

 


【治るタイプの認知症とは?】

 

正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)や慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、栄養障害、薬物、アルコールに関連する認知症の場合は、もとの病気を治療すれば治る場合がある。

 

・正常圧水頭症

正常圧水頭症は、脳脊髄液(のうせきずいえき)が脳室に過剰に溜まり障害を起こす、脳圧の上がりにくい水頭症。

歩行障害や物忘れ、排尿が間に合わないなど、トイレの問題などが出る。

水頭症は、脳腫瘍、くも膜下出血などでも発生し、子供に見られる事もある。

 

・慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫は、頭を強く打った事などが原因で、硬膜とくも膜の間にじわじわと出血し、血の塊ができる事で脳を圧迫する病気。

高齢者やアルコールを多く飲む人、血液がサラサラになる薬を飲んでいる人などに起こりやすい。

認知症のような症状が出たり、頭痛や吐き気、麻痺などが出る場合もある。

 

・脳腫瘍

脳腫瘍は、頭蓋骨の中にできる腫瘍の総称で、脳や脳の周囲の組織から生じた「原発性脳腫瘍」と、他の臓器で生じたがんが血液の流れによって脳に運ばれて増えた「転移性腫瘍」とがある。

腫瘍のできる部位によって初期症状は異なるが、ほとんどの場合、頭痛が起こり、腫瘍が周囲の神経細胞を圧迫する事によるけいれん発作が見られる場合もある。

特に、神経膠腫や転移性脳腫瘍のような悪性腫瘍の場合は、発作が起こりやすい。

他にも、聴神経腫瘍では、聴神経が圧迫された場合、初期症状として耳鳴りや聴力の低下が現れる事もあり、突発性難聴と区別がしにくく、人格や性格が変わったり、判断力が低下する事もある。

 

・甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は、何らかの原因によって甲状腺ホルモンが減少する病気で、全身の機能が低下する事で、精神的障害や身体的障害などの様々な症状が現れる。

精神機能が低下すると、やる気が出なかったり、抑うつ状態になったり、記憶力の低下、いくら寝ても眠いといった事が起こる。

身体的障害の場合、内臓機能が低下すると、便秘になったり、脈が遅くなったり、体重増加、疲れやすい、なんとなく寒い、体がむくむなどの症状が現れる。

 

・栄養障害

栄養障害は、食べ物が偏っていたり、消化管のトラブルなどで食べ物の消化や栄養の吸収が上手くいかず、身体の色々な機能に悪影響が出たり、機能不全を起こしたりするもの。

栄養障害で体に必要な栄養素が不足すると、体の代謝が妨げられ、様々な部分に異常が現れる。

症状としては、筋力の低下、免疫力の低下、目の暗順応障害、下痢、うつ状態、体重の減少などがあり、妊娠中の場合は胎児に脳障害が出る恐れもある。

 


【認知症の予防方法】

 

認知症の大部分を占める「アルツハイマー型認知症」や「血管性認知症」は、高血圧・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病と関連があるとされている。

例えば、野菜や果物、魚介類が豊富な食事を心掛けたり、定期的に運動をするなど、普段からの生活管理が認知症の予防につながる事が分かってきている。

また、症状が軽いうちに認知症である事に気付き、適切な治療を受ければ、認知症の進行を遅らせたり、場合によっては症状を改善したりする事もできる。

早期診断と早期治療によって、高い治療効果が期待できるため、自分自身や家族、友人、同僚に認知症が疑われる場合は、1人で悩まず、速やかに専門家に相談するようにしよう。

 

 

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