東京電力の旧経営陣らに無罪判決!公判の内容と世間の反応は?

東京電力の旧経営陣らが福島第一原発の事故を防げなかったとして、検察審査会の議決により強制的に起訴された裁判で、東京地裁は19日、3人の被告人に対し無罪判決を言い渡した。

起訴されていたのは元会長の勝俣恒久氏(79歳)と元副社長の武黒一郎氏(73歳)・武藤栄氏(69歳)の3人だ。

裁判の争点となっていたのは、原発の主要施設の敷地高さ10mを超える津波を予測できていたにも関わらず、対策を怠った事で事故を招き、福島県大熊町にある双葉病院の入院患者ら44人を死亡させた事に対する業務上過失致死傷罪の有無だ。

無罪を主張する3人に対し、検察官役の指定弁護士は禁錮5年を求刑していた。

裁判は、2017年6月30日の初公判から2019年3月までに実に37回も行われ、ようやく判決の日を迎えた。

裁判長は、最大の争点だった巨大津波を予見できたか否かについて、「予見可能性を認めることはできない」と判断した。

 

3人の被告人はいずれも無罪判決となったが、裁判の内容はどのようなものだったのだろうか。

そして、世間の人達・被災地の人達は、この判決をどう見ているのだろうか?

 


【初公判から37回公判までの流れ】

 

「初公判から第10回公判」

・初公判(2017年6月30日)

原発事故をめぐり東京電力の旧経営陣3人が強制的に起訴された事で裁判が始まり、3人は謝罪した上で「事故は予測できなかった」とし、無罪を主張した。

これに対し検察官役の指定弁護士は、「事故の3年前に東電の内部で津波による浸水を想定し、防潮堤の計画が作られていたとして対策が先送りされた」と主張した。

また、東京電力社内で津波対策をめぐって交わされたメールなどの具体的なやり取りの一部が明かされ、「3人は事故の前に津波を予測できたのに津波への対策を取らなかった」と主張した。

これに対し、3人は「当時の津波の想定では事故が起こる事を予測できなかった」と反論した。

 

・第2回公判(2018年1月26日)

東京電力の社員が「事故の3年前に幹部が参加した会議で巨大津波の可能性を示す試算が報告されていた」と証言したが、「試算には違和感を覚えた」とも述べ、津波は予測できなかったとした。

東京電力は、約600人の社員からの聞き取り調査や現場調査をもとに対応や経緯などを検証し、事故翌年に福島原子力事故調査報告書をまとめた。

この報告書で東京電力は、「津波想定は結果的に甘さがあったと言わざるを得ず、津波に対抗する備えが不十分であったことが今回の事故の根本的な原因」と結論づけた。

 

・第3回公判(2018年2月8日)

被告人側の弁護士は、「防潮堤が建設されていたとしても事故を防げなかった」とするシミュレーション結果などを証拠として提出した。 

 

・第4回公判(2018年2月28日)

グループ会社の社員が証人として呼ばれ、この社員は事故の3年前に巨大な津波の想定をまとめ、高さ15.7mの津波が押し寄せる可能性がある事を東京電力に報告したが、東京電力の担当者から「計算の条件を変えて津波を小さくできないか」と検討依頼されたことを証言した。

 

・第5回公判(2018年4月10日)

東京電力の津波対策担当者が証人として呼ばれ、担当者は「巨大な津波が来るという想定を事故の3年前に報告したが、元副社長から更に時間をかけて検討するという方針を告げられ、予想外で力が抜けた」と証言した。

 

・第6回公判(2018年4月11日)

東京電力の津波対策担当者が前回に続き、事故が起こる前に巨大な津波を伴う地震の可能性が指摘されていた事について、「複数の専門家から無視するなら証拠を示す必要があるという厳しい指摘を受けていた」と証言した。

 

・第7回公判(2018年4月17日)

東京電力の津波対策担当者が前回に続き、「事故の3年前にまとめた津波の想定をもとに防潮壁を作っていたとしても、浸水は防げなかった」と説明した。

 

・第8回公判(2018年4月24日)

東京電力の津波対策部署を統括していた元社員が呼ばれ、「事故の3年前に社内でまとめられた巨大な津波の想定は信頼性が低いと考えていた」と証言した。

 

・第9回公判(2018年4月27日)

東京電力の津波対策部署を統括していた元社員が前回に続き、「巨大な津波を伴う地震の予測が公表されていたが、切迫感を持っていなかった」と証言した。

 

・第10回公判(2018年5月8日)

気象庁から出向して地震調査研究推進本部の事務局で長期評価を取りまとめた職員が呼ばれ、長期評価では過去の地震の頻度をもとに、福島県沖を含む三陸沖から房総沖にかけて、マグニチュード8クラスの巨大地震が30年以内に20%の確率で発生するとされていた事について、「広い範囲で起きた過去の地震を全て一纏めにして考える事が少し乱暴な評価だと思った」と証言したが、「長期評価をまとめる過程の議論では、この領域のどの地点でも同じようなメカニズムで地震が起きると考えられることから、地震の発生確率について大きな異論は出なかった」とも証言した。

 

 

「第11回公判から第20回公判」

・第11回公判(2018年5月9日)

原子力規制委員会の元委員が証人として呼ばれ、元委員は事故の9年前に政府機関の部会長として福島県沖の地震の可能性を公表したことに触れ、「これに基づいて対策を取っていれば原発事故は起きなかった」と述べた。

 

・第12回公判(2018年5月29日)

原子力規制委員会の元委員が前回に続き、被告人側の弁護士が根拠に疑問を投げかけた事に対し、「当時公表した内容は信頼できるものだった」と述べた。

 

・第13回公判(2018年5月30日)

古い文献を調べている学者が、「東日本の沖合では過去に繰り返し津波を伴う地震が起きていた」と説明した。

国の機関はこの学者の見解などをもとに、事故の9年前に福島県沖でも地震が起きる可能性を示しており、この学者は「他の専門家も同意していた」と証言した。

 

・第14回公判(2018年6月1日)

過去の地震について調べている学者が呼ばれ、被告人側の弁護士の「3回の地震のうち1回は別のタイプの地震が発生するのではないか」という質問に対し、「その可能性も3割ほどある」と答えた一方で、「古い文献には地震の揺れによる被害の記録がなく、7割ほどの可能性で正しいと思っている」とも述べ、数え方に問題はないと説明した。

 

・第15回公判(2018年6月12日)

津波工学の専門家が呼ばれ、事故の9年前に国の機関が公表した福島県沖を含む地震の発生確率の予測について、「根拠がなく、専門家の間でも信頼性について議論が分かれていた」と述べ、被告側の主張に沿った証言をした。

 

・第16回公判(2018年6月13日)

津波工学の専門家が前回に続き、「東京電力が事故の3年前に巨大な津波が原発に押し寄せるという試算をまとめた後、更に時間をかけて専門の学会に対策の検討を依頼した判断は妥当だった」と説明した。

 

・第17回公判(2018年6月15日)

国の安全審査に関わっていた原子力工学の専門家が呼ばれ、「事故の前には電力各社の想定を超える高さの津波が来るとは思っていなかった。実際に事故が起きた事を踏まえると対策は不十分だった」と述べた。

 

・第18回公判(2018年6月20日)

東京電力で津波対策実務をしていた社員が証人として呼ばれ、事故の9年前に国の機関が福島県沖でも巨大な津波を伴う地震が起きる可能性を示していた事について、「国の見解を対策に取り入れずに安全審査が認められるのは難しいと思っていた」と証言した。

 

・第19回公判(2018年7月6日)

東京電力で津波対策実務をしていた社員が前回に続き、福島県沖で巨大な津波を伴う地震が起きる可能性があると指摘されていた事について、「いずれは対策を取る必要があると考えていたが、切迫性は感じていなかった」と証言した。

 

・第20回公判(2018年7月11日)

東京電力内で巨大津波を想定して沖合の防潮堤の建設を検討した社員が証人として呼ばれ、「建設には数百億円かかると元副社長に報告していた」と証言した。

 

 

「第21回公判から第30回公判」

・第21回公判(2018年7月24日)

想定される津波の高さを解析したグループ会社の社員が証人として呼ばれ、この社員は「事故の1年前に解析結果を報告したが、東京電力の担当者は従来の想定が妥当でないと認識していたと思う」と証言した。

 

・第22回公判(2018年7月25日)

検察官役の指定弁護士が裁判官に対して、津波や事故の痕跡を見なければ証言内容の理解や評価ができないため、福島第一原発の現場に出向いて検証する事を求めた。

 

・第23回公判(2018年7月27日)

日本原子力発電の元社員が証人として呼ばれ、事故の3年前にまとまった巨大津波の想定に対して、「東京電力が対策を保留した後も日本原電では独自に津波対策を進めていた」と証言した。

 

・第24回公判(2018年9月5日)

東京電力の原発津波対策部門のトップを務めていた元幹部が呼ばれ、「数百億円かかる工事は容易でなく、対策を保留することに賛成だった」と述べた。

 

・第25回公判(2018年9月7日)

地震学の専門家が証人として呼ばれ、東日本大震災の巨大地震の規模について、「マグニチュード9は起こらないと思っていた。初めての例外が起こってしまった」と述べた。

 

・第26回公判(2018年9月18日)

原発事故で避難を余儀なくされた病院の入院患者の対応にあたった元看護師が証人として呼ばれ、当時の状況について「避難するバスで座ったまま治療を受けられずに亡くなった患者もいた」と証言した。

 

・第27回公判(2018年9月19日)

原発事故で病院からの避難を余儀なくされ亡くなった入院患者の遺族などの供述調書が法廷で読み上げられ、両親を亡くした女性は「こんなに大きな事故の責任を誰も取っていない。厳しい処罰を求める」と述べた。

 

・第28回公判(2018年10月2日)

津波工学の専門家が証人として呼ばれ、「防潮堤を設置していれば原発に押し寄せる津波はかなり食い止められたと思うが、実際に施工するのは難しい」という認識を示した。

 

・第29回公判(2018年10月3日)

当時、原発の安全審査を担当していた国の審査官が証人として呼ばれ、事故の9年前に福島県沖での大津波を伴う地震の発生確率を示した国の長期評価について、「最新の知見とは言えず、直ぐに安全審査に取り込むべきという認識はなかった」と証言した。

 

・第30回公判(2018年10月16日)

この日から被告人質問が始まり、原発の安全対策を担当していた元副社長は、事故が起きる3年前に津波対策を先送りしたと指摘されていることについて、「大変心外だ」と述べた。

 

 

「第31回公判から第37回公判」

・第31回公判(2018年10月17日)

原発の安全対策を担当していた元副社長が前回に続き、「当時、最善の努力をしたが、いかんともしがたかった」と述べ、事故を防ぐ事はできなかったと主張した。

 

・第32回公判(2018年10月19日)

原発を統括する部門のトップを務めていた元副社長は、どうすれば事故を防げていたのかという質問に対し、「不確実であいまいな事への対応は難しい」と述べた。

 

・第33回公判(2018年10月30日)

当時、東京電力の最高責任者だった元会長は、事故が起きる2年前に巨大津波が押し寄せる事を認識できたのではないかという指摘に対し、「安全対策に疑義をはさむ状況ではなかった」と述べ、津波の到達を予測できなかった事を改めて主張した。

 

・第34回公判(2018年11月14日)

福島県の高齢者施設から避難を余儀なくされ亡くなった入所者の遺族が、「誰1人として責任者が責任を取らず悔しい」と述べ、旧経営陣らの処罰を求めた。

 

・第35回公判(2018年12月26日)

検察官役の指定弁護士が最終的な意見を述べる論告が行われ、検察官役の指定弁護士は「最高経営層にもかかわらず、何ら対策を講じなかった責任は極めて重い」とし、3人の被告人に対し、禁錮5年を求刑した。

 

・第36回公判(2018年12月27日)

事故の後に避難を余儀なくされて死亡した入院患者の遺族の弁護士は、「3人の責任が明らかにされなければ、亡くなった被害者の無念を晴らすことはできない」と述べ、被告人に厳しい処罰を求めた。

 

・第37回公判(2019年3月12日)

被告人側の弁護士が、3人の無罪を改めて主張した。

 


【世間の人達は、この判決をどう見ている?】

 

・こういう時に「予見」というワードが注目されるけどここでの意味は注意して読むべき。単に予想出来たかが問題になっている訳ではなくて、予想した上で回避する義務が生じたかということまで意味として含まれる。例えば車を運転すれば人を殺してしまう可能性がある。だからといって人を殺すことを予見できたから過失があったとは判断されない。むしろ、具体的な状況、人が飛び出してきたとか、法定速度超過とかの事情を見て普通の人なら人を殺さずにすんだかという観点から判断される。

 

・”事故を防げたか”については対立意見のまま放置せずきっちりとした結論がほしい。
これから着手する時の参考にする必要があるし、その規模でいけないならば更なるコストが必要となる。
すでに様々なメディアが報じているにもかかわらず、現状南海トラフ関連で未然に着手している企業は少ないと感じる。東電もこのスタンスだったのだろう。原告側も結果から得た感情的な推測論を述べているようにしかみえない。

 

・予見はできないの答はわかる。。
しかし今回予見出来ない震災があるのに政府は推進するのか、対策は万全とは程遠く尚且つ地震大国である日本に原発を推進するのは不思議である、利権が莫大な原発は一歩間違えば軍事兵器になる、更に人間が扱いきれない魔物なのは間違いない。
東電や政府はそれを理解しながら騙し騙し推進する、テロより確率が高い大量殺人が可能な原発をこのままで良いのか素直に心配になる。

 

・無罪になったから良しでは無く
この3人の責任ある立場だった方には、予想していた方の意見に聴く耳を持たなかった事には反省して頂かないと亡くなられている現場作業員の方や避難を強いられている方々の当たり場のない気持ちが報われないでしょう!
なので、せめて形だけでも記者会見を開き当時予想は出来なかったかも知れないが申し訳なかったと一言言うべきだ!それが責任者である者の務めです。

 

・少なくとも可能性を知っていたのははっきりしている。
問題はその可能性の大きさと、対策をとるためのコストおよび、アピールしてきた原発の完全無欠な安全性との整合性。
自分が経営者でも可能性を過小評価して対策はとらずにいたと思う。

 


【被災地に住む人達は、この判決をどう見ている?】

 

・これまで暮らしは大変だったが、そんな話はしたくない。

 

無罪でいいと思う。

 

自然災害だからどうしようもない。

 

ただ、爆発は余計だった。

 

・事故は許せないし、避難生活や仕事がうまくいかないなど大変なことばかり。

 

それでも、個人を責める気にはなれない。

 

・無罪とは思わなかった。

 

あれだけの事故が起きたのにトップに責任がないなんて。

 

・とうてい理解できない判決だ。

 

全く私たち、被災者の思いを東京電力も裁判所も受け止めてくれない結果で、本当に残念でなりません。

 

・多くの人が避難を強いられ、いまだに帰還のめどが立たない状況に置かれている。

 

企業のトップが責任を取らなくていいのか。

 

・事故を繰り返さないため、トップの責任をはっきりして欲しかった。

 

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